会長挨拶

山口県立総合医療センター
病理診断科 中央検査部 部長  亀井 敏昭

時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃より多方面からのご支援を頂戴し、心より感謝申し上げます。

さて、来る平成26年11月8日(土)、9日(日)の2日間、山口県下関市の海峡メッセ下関、下関市生涯学習プラザ、下関市民会館に於きまして開催されます「第53回日本臨床細胞学会秋期大会」のお世話を私共でさせて頂くことになりました。

日本臨床細胞学会は、発足して52年目となりますが、臨床細胞学・細胞診断学の学術研究とその臨床応用を推進するための専門学会として成長し、会員数は約1万2千人を数え、更に昨年4月からは佐々木 寛理事長のもと公益社団法人化を成し遂げ、厚生労働省の専門医認定団体としても認可され、日本医学会、日本専門医制認定・評価機構、内科系保険連合などへの加盟も認められるまでに発展して参りました。

以上のことは、これまで努力を積み重ねられた先人のお力に負うところが大であることはいうまでもありませんが、会員の皆様方の日常業務での工夫や努力のみならず、臨床研究面での研鑽やがん検診などの実績によるものと思っています。本学会の最大の特徴は学会構成員の多様性にあり、内科、外科、産婦人科、耳鼻科、泌尿器科、口腔外科・歯科、臨床検査医学および病理・病態学を含む幅広い領域にまたがる専門医が一翼を担い、さらに日本の細胞診検査を支えるもう一方の大きな柱でもある細胞検査士の皆様方の協力体制に負うところが大と思われます。

細胞診断学の社会的役割はきわめて大きく、「がん検診」の実施手段としては「子宮がん検診」、「肺がん検診」や「乳がん検診」などに用いられております。特に、「子宮頸がん検診」における細胞診の役割はがんの早期発見や死亡率減少に大きく寄与して参りました。

このたび開催させていただく第53回日本臨床細胞学会秋期大会でもまた、細胞診断の精度を維持し、向上させるための学術集会を目指しており、国民の健康を守る重要なステップと考えております。しかしながら、がん死亡率は増加の一途を辿っており、本学会の役割は更に拡大しつつあるものと拝察します。第53回秋期大会では、がん診断の質を高めることや治療選択のための有益な情報を得ることを目的に、「細胞診断学の向上とがん診療への貢献を目指して?新時代での精度管理を中心に?」というメインテーマを掲げました。

そのテーマに沿った形での特別講演、要望講演、招請講演、教育講演、シンポジウム、ワークショップなどを企画し、海外からの著名な研究者にも参加いただき、国際的な取り組みも考慮し、企画いたしております。

いくつか具体的な試みを紹介したいと思います。

特別講演1としては、CAPのアジア委員でもあり、病理診断学、細胞診断学に造詣の深い真鍋俊明先生(滋賀県立成人病センター研究所 所長、京都大学 名誉教授)に21世紀の細胞診断分野における精度管理を「細胞診における精度管理-新時代への在り方を求めて-」とのタイトルでお話しいただくこととなっております。真鍋先生は、学会が行われます下関市のご出身であり、熱の入ったご講演をいただけるのではと楽しみにいたしております。

特別講演2としては、木村秋則氏の「奇跡のりんご?見えないものを見る力?」です。絶対に不可能といわれた無農薬リンゴの栽培に成功し、大きな話題を集めた木村氏の実体験による講演をいただくこととなっております。映画化でも話題を集めた厳しい環境での農業への試みをお話しいただけるものと思います。

特別講演3としては、協和発酵キリン株式会社 代表取締役社長 花井陳雄氏には「抗体医療の現状と今後の課題」と題して、21世紀のがん治療の大きな柱になる抗体医療について概説していただきます。抗体医療は、抗体という生体の免疫機能を担う分子を利用する医療であり、その治療はがん細胞の持つ目的分子のみを攻撃することでがん細胞を傷害するという治療法であり、副作用が少ないという特徴を持っています。また生体内での安定性が高いために、週に1度ないし数ヵ月に1度程度の使用により有効な結果をもたらすとされています。

外国からは、Carlos W Bedrossian 先生、Richard M DeMay 先生のお二人に、それぞれ「Body cavity fluid cytology;now,past,and future」と「Diagnostic clue of cytopathology」とのタイトルでご講演いただくこととなっております。また、市民公開講座としては、副会長:髙橋睦夫先生のお世話で「知っていますか?子宮頸がんは防げることを!?20歳からの検診は常識です?」のタイトルで、県民への啓蒙活動を実施する予定です。

上記以外にも6つの要望講演、14の教育講演、10のシンポジウム、9のワークショップなど盛り沢山のプログラムを組むことができました。さらには、中皮腫の国際シンポジウム、精度管理をテーマとした国際アジアフォーラムも企画し、国際的な視野での討論を期待しております。充実した学術集会となるように精一杯努力いたしますので、皆様方にご参加いただき、高い評価をいただけることを希望しております。

学会体制としましては、副会長に髙橋睦夫先生(美祢市立病院事業局 病院事業管理者、山口大学 名誉教授)、永井宣隆先生(広島女性クリニック 院長、広島県支部長)のお二人にお願いし、プログラム委員長として岩成 治先生(島根県立中央病院 医療技術局 局長)、プログラムコア委員長として羽場礼次先生(香川大学医学部附属病院 病理診断科・病理部 病院教授)にお世話になり、事務局長としては渋田秀美氏(山口県立総合医療センター中央検査部 副技師長)にお願いしております。顧問として、皆様ご存知の石原得博先生、金城 満先生、西 国廣先生、小林忠男先生にサポートをいただいております。

本学会が行われる下関市は源平の戦いの場所であり、巌流島の決闘、明治維新などでの歴史の現場であり、東アジアへの交流の架け橋でもあります。九州との間の関門海峡は、多くの船舶が往来する交通の要所で、日本の活力を体現しています。

来年度は、NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」が放送されますが、明治維新をリードした吉田松陰の妹である杉(すぎ) 文(あや)が主役であり、山口県を舞台とした場面が数多くみられるものと思います。また、下関市はふぐを始め、豊かな海産物にも恵まれていますので、学術的な面と共に食事の面でも想い出づくりをしていただければと考えております。どうか秋期大会をお楽しみいただけますようにお願い申し上げます。

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