会長挨拶

第29回日本バイオセラピィ学会学術集会総会を開催するにあたって
「がんの微小環境に迫る」

この度、第29回日本バイオセラピィ学会学術集会総会を2016年12月1日、2日の2日間、福岡県久留米市の久留米シティプラザにて開催させていただくこととなりました。本総会を主催させていただきますことは久留米大学先端癌治療研究センターにとりましても大変光栄なことであります。会員の先生方には心より御礼申し上げます。

本学会は、生物活性物質(BRM)の研究を通して、がんとがん関連疾患に対する生物学的治療に貢献することを目的として発足し、平成11年より「日本バイオセラピィ学会」に名称変更後、抗体療法、細胞療法、分子標的治療あるいは免疫治療といった新たなバイオセラピィの開発および実践の場として貢献して参りました。

バイオセラピィの根幹は免疫療法ですが、1990年代に免疫系が認識できる「がん抗原ペプチド」が発見され、この20年間で特異的がん免疫療法の分野での臨床研究が急速に進みました。2010年に去勢抵抗性前立腺癌に対して樹状がん関連抗原を発現させた樹状細胞療法(プロベンジ)、2011年には悪性黒色腫に対してT細胞活性化抑制抗原に対する抗体(イピリミマブ)が米国FDAに承認されました。また、2012年にはがん局所でのT細胞活性化抑制抗原に対する抗PD-1及び抗PD-L1抗体が肺がんに有効であろうという結果が報告されました。近年のがん免疫療法の進歩は目を見張るものがあり、米国の科学誌「サイエンス」は、がん免疫療法を身体の免疫システムを利用した非常に魅力的な治療法として、2013年の科学のブレークスルー(画期的な進展)に選びました。更なるがん免疫療法の進歩のためには、免疫抑制に働いているがん微小環境における免疫細胞の動態並びにT細胞機能への影響を解明し、新規がん免疫療法を開発することが重要と考えます。

そこで、今回の学術集会は、「がんの微小環境に迫る」というテーマで開催させていただくことといたしました。特別講演は、世界的にがん微小環境における免疫細胞研究の第一人者であるシカゴ大学のGajewski 教授、T細胞機能研究の第一人者である岡山大学の鵜殿教授にお願いしております。また、がん免疫療法で進歩が著しいチェックポイント阻害を応用した治療や新規の腫瘍抗原や治療方法の開発、免疫療法の効果を増強する方法などのテーマについてもシンポジウム、ワークショップをご用意いたします。 

この第29回日本バイオセラピィ学会学術集会が盛大かつ充実した会となるべく、是非とも皆様のご支援とご協力を賜りますよう何卒お願い申し上げます。

第29回日本バイオセラピィ学会学術集会総会

会長  野口 正典

(久留米大学先端癌治療研究センター 臨床研究部門 教授)

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